とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

Zylkene(ジルケーン)が豪州上陸

あ、どうも。ほぼ一ヶ月ブログ放置したワタシデス。

いやぁ、なんか急に院長が「そういえば来週から1週間ニュージーランド行ってくるから病院任せた」とか言われたり、喉風邪貰ったりしてました。はい。

そんでもって来週はまたしても例の病院の人手が1週間足りない、って言うんで、自分が月火金、院長が水木をカバーする形になってしまった。院長がカバーしてる間はこっちの病院も自分一人だし、いよいよもってシンドイ。どうせまた更新無くなる(確信)

 

でもまぁアレだ、このブログは人に急かされて書くようなモンじゃないんでね、生存確認したければ自分のツイッターでも覗いててください。もっと気楽にアホ呟いてます。

 

じゃあこのブログの存在意義って何なんだよ!ってなるんですけど、多分それは140字では書ききれない真面目ネタを書くことなのではなかろうか。多分そんな感じだ。

 

 だから現在ホットな話題(ごく一部)のZylkeneについて。

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©Vetoquinol。http://www.vetoquinolusa.com/content/zylkene

世界各国には様々なお薬が、人間医療分野にも動物医療分野にも溢れかえっておりますが、これら医薬品を制御、管理する法律やルールってのは各国それぞれバラバラでして、ある国は一般的に使用されている薬が他国では禁止薬物に指定されてたりと、ぶっちゃけ訳分からん事になってます。

医薬品の投与ってのはそれほど慎重になるべき世界でして、各国それぞれが独自のリスク管理をするのも当たり前なんですけどね。一部の国は「この新薬はすげぇ!うちの国の利益になるやん!」として使用を始める一方で、一部は「よーしヘンな副作用とか出ないか、あの国の奴らの使用による臨床結果を見極めてやろう」と保守的に動くのです。

ましてやそれが「一般用医薬品」として登録したい!みたいな医薬品だとさぁ大変。一般用医薬品ってのは医者の処方箋を必要としないお薬なので、これの見極めを間違えるといよいよもって一般に一気に浸透してしまい、取り返しのつかない状況になりかねないので保守的な場合はいよいよ保守的になってしまうわけ。医者が処方する薬ならまだ「医者が目を光らせている」という制御基板があるんだけどね。

 

 

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Zylkeneのパンフ。病院宛に売り込みとして届いた。

そんな中、2018年初期になりようやくここオーストラリアに上陸を果たしたのがZylkeneというこのお薬。

主にヨーロッパと北アメリカで売られている、動物用の抗不安剤。今までずっとオーストラリアでは売られていなかったのですが、この度ようやく、一般用医薬品として上陸を果たす次第でございます。

ちなみに日本でもジルケーンの名前で売られていた筈なんですけど、一時期製造中止になって入手不可能だったとかなんとか。今はどうなんスかね。何にしろマーケティングは大事だなぁ。

 

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獣医師個人(僕)にも製薬会社から直々に紹介のお手紙が来た。

 

超簡潔にまとめるならZylkeneは牛乳に含まれるAlpha-S1 tryptic casein(アルファ-S1 トリプシン カゼイン)という成分で作られており、こいつには経口投与によるリラックス効果があるとされています。

要は「寝る前のホットミルク」や「母乳を飲んだ後スヤスヤ眠る赤子」の効果です(簡潔!)

検証研究は色々されてますが、科学的で完璧にハッキリとした効果の証明はイマイチできてないというのが自分の認識。ネコではある程度の効用を認めた論文あった。

まぁ何が良いって副作用が無いとされている部分ですよ。「利があるかも、害は無し」なら試す価値ありということ。一般用医薬品だから敷居も低いし。

 

 

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パンフの薬効諸々。まぁこれ見た後で別に論文読むんですけどね。

 

動物のストレスによる問題は色々と多く、ネコの急性膀胱炎やら脱毛やら、イヌの騒音恐怖症やら分離不安症やら、割かし日常的に相手することになります。 特にここケアンズでは現在絶賛雨季真っ只中で、雷鳴轟く週明けには雷雨恐怖症で庭から逃げだした迷子犬を探す飼主の電話でシェルターがパンクしますし。

精神的な面を含んだ症状なので対処も個々区々になりやすく、こちらとしてはこういう商品が入ってきて手数が増えるのはありがたい。 

 

まぁガッツリとした効果を期待しすぎてはいけないので、あまり効かなかったら獣医に精神剤を処方して貰うのが吉なんですけどね。カミナリさんのおかげで病院の医薬品の棚は万年トラゾドン不足ですよ全く…。