とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州のCOVID-19日記(4月第1週)

前回の記事はこちら:

 

happyguppyaki.hatenablog.com

 

 


4月1日

午後までの総感染者4862人(+305)、死亡21人(+2

今日も引きこもりである。外の状況は不明。近所の誰かが電ノコを使っている音がする。DIYやってるなぁ。

ひたすら暇だ。お菓子でも焼きたい気分だが小麦粉が心許ない。

 

引きこもっていたので大して真新しいニュースも入ってきていない。JobKeeperの給付金申請が37万人を既に超えたらしい。その量の申請を精査するのにオーストラリア政府はどれだけ時間かける気なのだ。

 


4月2日

午後までの総感染者数5137人(+275)、死亡25人(+4

基本的には引きこもり上等体質なのだがツラい。外に出たい。終りの無い缶詰は人から希望を奪う。勉強も続かず、脳死でゲームをしても大して面白くもなく、結果不貞寝をする。駄目である。

昼飯は牛乳1杯。夜をしっかり食べる生活になってきた。動かないってキツいのでダンベルを振り回す。

 

30分程、近所のスーパーに買い物に行った。ニンジンが一人2袋までと書かれている。なんでよ。馬じゃねぇんだから。肉類の品揃えがある程度回復したように見受けられる。買い占めしてる奴らの勢いが落ちたのだろうか。だが小麦、砂糖、パスタは相変わらず完全に品切れである。トレペは知らん、うちにはストックがあるのでみていない。品物をレジに持っていくと「自分で袋詰めしてください」と言われた。ちょっと殺伐としている。みんな疲れてるのね。尚、ほぼ全ての店舗において現金を受け付けなくなっている(現金経由でウイルス媒介があるので)。クレジットカード以外お断り。財布の小銭を全部家の小銭入れにおいてきた。

 

甘いものが無性に食べたくなったが、砂糖もバターも家にはあまり残っていないのでお菓子作りができない。ストレスである。だが同時に、ここでクッキーなんて焼いた日にはなまじ運動していないので体重が凄い事になりそうだ。

明日から3日間は仕事だ。外に出れる。誰かの顔を見て話ができる。とても人間っぽいことだ。ちょっと嬉しい。そうか、この甘いものが食べたいってのはストレスの兆候か。あれだ、英語が喋れなかった12歳当時の状況に似ているのだろうか。

 

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近所のショッピングモールのフードコート。持ち帰りオンリーで全席が撤廃されてる。

 

4月3日

午後までの総感染者数5350人(+213)、死亡28人(+3

今日は仕事。手術の数はすくなかったが外来診察はそこそこコンスタントにこなした。ナースたちが昼飯調達でいつものバーガーショップにテイクアウトを頼もうとしたら開いていなかった。

 

こんな論文が出ていた。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.015347v1
ネコへの感染は用意なのではという論文、ネコ→ネコ感染も示唆している。どうなるだろうか。


4月4日

午後までの総感染者数5550人(+200人)、死亡30人(+2

この総感染者数ってもしかして週末は伸び悩むんか?月曜になったら報告しよう的なノリの研究所あるん?オーストラリアだとありそうだから困る。いやまぁ基本的にはこういう研究所は週末も働いてるんだけどな。

 

今日の外来は2件ほど「仕事を失ったので高額な治療費は無理」と言われて最善治療ができなかった。お茶を濁す治療になるわけだが、もやもやする。今年は安楽死件数が増えるんだろうなぁ…特に「役所のお仕事」を手伝ってる身なのできつそうだ。

 


4月5日

午後までの総感染者数5687人(+137人)、死亡34人(+4人

新感染者数の伸びが遅くなってきたのはロックダウンの成果なのか、単純に週末に報告数が少なくなるのか。しかし死亡者数は加速してきている気がする。感染者層が元気のある旅行者から国内の高齢者に移行しているんか?ただ、豪州の死者の多くは豪華客船の乗船者から出ているので何とも言えない。

 

日曜日なので仕事は普段通りスローペースであった。そして明日からはまた三連休である。どうしたものか。予定は全くない。

 

豪州のMonash大学が駆虫剤として知られるイベルメクチン(Ivermectin)が、in-vitroにおけるCOVID-19の抑制力を発表した。どうやってウイルスのRNAを抑制・排除しているのか、その要因は全くもって不明とのことだが、多分この流れだと臨床治験にこぎつけるだろう。

イベルメクチンは既に人間のシラミ等の治療に使われているし、オーストラリアは畜産大国である。ヒツジや牛の駆虫剤としてメジャーな薬で、イヌネコであってもフィラリア予防薬として使われるので我々獣医師もお馴染みのアレである。生産ラインはあるはずだ。

が、ぶっちゃけイベルメクチン先生にそんな画期的な期待をしてはいけないと思ってる。だってin-vitroだけの話でしょう…それよりウシ用の駆虫薬を飲んで中毒起こすバカが多発しないか心配である。

 

JobKeeperやJobSeekerの申請に翻弄されている友人達のチャットが飛んでくる。やれ入国日だ、やれ総資産だ、やれパートナーの収入だ、とにかく記入しなくてはならないものが多いらしい。そもそも申請するためのオンラインサイトがよくサーバー落ちしている模様。友人達はまだそこまで切羽詰まった感じではないが、人によっては本当に命がかかった問題であり、みんな必死のようだ。

そんな中、仕事をして給料を貰えることの凄さを地味に実感するのである。
雇われ獣医師、しかも大きな会社の傘下にある病院なので現状の自分は「会社員」みたいな立ち位置なのだが、こういう時は固定給がありがたい。そして圧倒的に普通の「会社員」よりも首を切られ難い仕事でもある。特殊技能資格職ありがとう…。

 

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イベルメクチンでいいならうちの病院にも1リットルくらいあるぞ…

 

4月6日

午後までの総感染者数5795人(+108人)、死亡39人(+5人

月曜日だが総感染者数の数は減少傾向。ラボの報告は週末でもしっかりしているようです。そしてこれはロックダウンの成果と言ってもよろしいのではなかろうか。海外渡航禁止令発令から22日目、Stage-2のロックダウンから丁度14日目である。

ただし死亡者の数は加速しているように見える。大都市における医療キャパシティーが厳しくなってきているのであろうか。

 

今日は物資調達のために買い出しに出た。スーパーマーケットは入場者数の人数制限をかけるために入口に制限を設けていた。普段はWoolworthsに行くのだが今回はColesへ。手に入らなかった砂糖が普通に売っていて感動。買い占めは落ち着いてきたか?
ただし小麦とパスタと米は相変わらず売り切れである。

 

日本、安倍総理が緊急事態宣言を発令する方針を表明。まだ発令しないのね。

しかし諸外国のロックダウンと違い法的な行使力が全然ない模様。オーストラリアを見ている限り、警察がその場で罰金を科せられるような体制でないと民衆はどこまでも身勝手になれる印象があるが、果たして日本の「国民性」はこれをどこまで守れるのか、海外目線と日本目線の両方を持つ身として注視している。

基本、日本には強く「御上が言う事」に流されがちな傾向があるとは思うが、同時にあのワーカホリックな国民性が抑止の邪魔をしそうである…。経済難に対する国の補償が大きくものをいうであろうなぁ。

 

ニューヨークのブロンクス動物園でトラが新型コロナ陽性反応。飼育員からの感染ルートが疑われている。先の論文でも出ていたがやはりネコ科にはある程度の感染力があるのだろうか?各国の獣医師会の動きにも注目したい。ヒト→ネコ感染の報告は散見され始めたが、現状ではネコ→ネコ感染は先に載せたPeer-reviewされる前の論文だけ、ネコ→ヒト感染の報告は無い。人獣共通感染症扱いされるととたんに獣医師への負担が莫大なものになるので、正直勘弁していただきたいところ。

 

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入場制限のための突貫検問が敷かれたスーパー。

 

4月7日

午後までの総感染者数5908人(+113人)、死亡48人(+9人

やはり明らかに感染数が減っている。ロックダウンの成果であろう。しかしここに来て死者の大加速。死亡者は客船や海外から帰国した70代が多い。

 

海外。英首相のジョンソン氏の容体が悪化傾向のため自主隔離からICUに移った。現状ではベンチレーターではなくただの酸素吸入によるサポートの模様。意識も良好。

 

今週末はイースターである。
本来ならば子供達を集め、庭や家中に隠したイースターエッグを我先にと探し回る日であり、家族や親戚友人で集まり、BBQをしてご馳走を囲む日である。しかし政府は耳にタコができるほど繰り返し言い続けている、

「今年はイースターはありません。家にいてください」

そんな自分もこのイースターは内陸のほうに出向いて野生のオカメインコセキセイインコを探す予定だった。家にこもるしかないのである。イースターなんてなかった。なかったんや。なんなら仕事になったわ。仕事万歳。

 

日本、緊急事態宣言を発令
昨日の項に書いたとおりの反応を海外紙は見せている。強制力のないこの発令に国がどう動くか、世界に注視されている。素晴らしい一致団結の国民性を見せつけるか、はたまた嘲笑を買いながら医療崩壊をするかの瀬戸際だ。普段の地震や台風における国民性には世界中から定評があるが、今回は目に見えないウイルスが相手である。

目に見える災害で、小学生の頃から叩き込まれている自然災害精神とはわけが違う。

自分にも予測がつかない。

 

 

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豪州のCOVID-19発症源分布。国外持ち込みが多い。NSW州の国内感染もロックダウンで抑え気味。

 

 

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豪州の総感染者数(折れ線)と新感染者数(棒グラフ)。減少傾向にある。

 

 

来週に続く。 

 

豪州のCOVID-19日記(2月~3月終わり)

2月上旬

COVID-19の存在がアジアを中心に周知され始める。

オーストラリアでは至って普通の生活のままである。

ニュースでは時折新型コロナウイルスについて触れるが危機感は全くない。

 

2月8日

自分の動物病院に近くの大学病院からタレコミが入る。

政府はマスク等のPPEの流通をヒトの病院に優先するため、一般流通を制限するとのお達しが大学病院に入ったそうで、近辺の動物病院各位もストックの枯渇に注意せよとのこと。

「まぁ200枚くらいあるから大丈夫だろ」とは院長の言葉。

 

2月17日

オカンが豪州から日本に帰国するにあたり、近くの薬局に消毒剤を探しに行く。

日本では既にマスクもエタノール系消毒剤も品切れであるため、豪州から持ち帰る算段であったが、近所の薬局ではアルコールジェル系統の消毒剤はほぼ全て売り切れであった。

どうやらオーストラリアでも一部の人間がこういった物は既に買い占めているようだ。
辛うじて2つだけ残っていた20~30mL程度のジェルサニタイザーを購入。

 

エタノール70%がなんだかんだ一番便利だぞ」

 

とアドバイスし、スーパーの掃除用品売り場で工業用エタノール95%の1L入りを購入。
一つのスーパーでは売り切れていたが、もう一つのスーパーには普段通り20本程おいてあった。

こちらはまだ目を付けられていないようである。知識は力なり

 

2月19日

オカンが日本に帰国。日本行きの飛行機はガラガラである。新型コロナの風評被害は大きい。

並んでいるアジア人は皆がマスクを着用している。一方で白人はほとんどしていない。

危機管理能力が違うというより、単純にアジア人がマスク慣れしているせいか?

 

2月26日

日本で急速に新型コロナへの関心が広がっていく。ツイッター上でも感度や特異度といった言葉をよく見るように。

 

2月28日

日本、唐突な全校休校宣言を発令。オーストラリアではあまり話題にならない。

自分用にも工業用エタノール1Lを購入し自宅にストックする。まだ普通に売っていた。

観光業主体のケアンズは街が閑散としている。外国人観光客(特に中国)が来ない。

 

3月6日

日本の休校宣言から約1週間。オーストラリアは通常営業である。

海外渡航歴のある連中から散発的に新型コロナが出るものの国内で問題がある兆候はない。

3月1日にオーストラリア人初の死者は出ているものの(ダイヤモンド・プリンセスから降りた老人)、新たな感染者は一日10人に満たない。

オージーは基本的には普段通りの通常営業。ただしトイレットペーパー買い占め騒動が勃発。全国のスーパーからトイレットペーパーが姿を消す。

 

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消えたトイレットペーパー。他の商品は通常通りある。

 

3月12日

それまで新感染者数が10人/日に満たなかったのが、ここにきて一気に50人/日程度に加速。

俳優のトム・ハンクスがQLD州で映画撮影中にコロナ陽性、自主隔離に入る。

この辺りから全国的にニュースとして流れコロナウイルスの名前を聞かない日は無くなりつつある。

豪首相、17億ドル第一次経済刺激策に投入

 

 

3月14日

ニュージーランドが新型コロナ対策として入国者に14日間の自主隔離を申請。

 

 

3月15日

オーストラリアも後を追う形で入国者(国民・外国人問わず)に14日間の自主隔離を申請。唐突な政府の動きに各地でパニックが発生。食料品の買い占めが横行する。

米、小麦、パスタは完全にスーパーから姿を消す。缶詰類も品薄に。

トイレットペーパーを目にしなくなってからしばらくするがまだ無い。

 

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肉類の残っていないスーパー

 

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小麦も消えた。

 

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パスタは一人2袋までという制限があっても全て売り切れ

 

3月16日

生徒3人に陽性反応が出たためクイーンズランド大学は全ての講義を停止。

各州が感染対策に独自の取り決めを始める。

WA州とNSW州は学校行事で500人以上が集まる運動会等の禁止措置を発令。

 

3月18日

豪州、全海外渡航禁止例を発令。全世界的に本格的な鎖国体制に入り始める。

各国で豪州に帰国しようと壮絶な帰国便確保パニックが発生。

フィリピンから豪州への便がチケット一人$1300したらしい。

 

3月19日

クルーズ船「ルビープリンセス号」の乗船者2700人がシドニー港より国内に受け入れられる。14日間の自主隔離が条件とされた。

この頃より新感染者数が100人/日を超え始める。

自宅周りでは相変わらずマスクを着けた人をみない。

動物病院のほうでは何故か一日の売り上げで過去最高額を叩き出した。

 

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シドニー海上で数日に渡り立往生していたルビープリンセス号

 

3月20日

ルビープリンセス号がら下船したうち症状を訴えていた13人中3人のコロナ陽性を確認。シドニー中心街の閑散とした風景がニュースでよく流れる。NSW州は感染の中心となり始めているようである。

ケアンズにて初のコロナ陽性が出る。周りは「ついに出たか」といった反応。

小麦もパスタも米も肉もスーパーでは手に入らない。

 

3月22日

豪首相、Non-essential serviceの事業停止を23日正午より実施するよう要請。

パブや映画館、娯楽施設は全て営業停止措置を取る。

レストランにおいては持ち帰り以外は禁止。

また、66億豪ドルの第二次経済刺激策を投下。

 

3月23日

求職者と給付金を求める人の山で職安がパンク状態

あと酒屋にも長蛇の列ができる。

正午よりNon-essential serviceの営業停止と言われていたが、午後になっても開いているは多かった。そりゃそうである、昨日の今日で営業を止められるような経済状況ではない。

この日、新たに350人の新感染者を確認、国内最悪の数となる。

動物病院は外来数激減により暇なので自分は有休を消費。

飼主は呼ばれるまで車内待機、患畜を連れてくるのは健康な大人1人だけという取り決めを実施。

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役所にできる間隔の広い長蛇の列。皆が給付金と仕事を求めてる。©ABC News


3月24日

獣医師庁(Vet Surgeon's Board)より緊急連絡用メールが届く。

内容は「貴方の動物病院で使ってない人工呼吸器があれば数を把握しておきたいので連絡せよ」

同日午後、今度はうちの動物病院にケアンズ総合病院から直接電話で「人工呼吸器を持っているか」と相談。

ただ単に数の把握を計っているだけだと信じたい。

 

3月25日

状況記録の意味があると判断しこの記録を付け始めた。

午前現在の総感染確認数2252人、死者8名

WA州でアルコールの購入数に制限がかかる。買い占め対策の模様。

首相、Elective surgeryの先延ばしを義務化。病院の余力を確保する策。勿論急を有する医療行為は通常営業。おっぱい豊胸手術できないね…。

全国的に規制レベルがStage-2に移行。23日に執行されたStage-1から更に厳しくなり、
結婚式参加は5人まで、葬式10人まで等の制限が加えられる。バースデーパーティーやBBQでの集まりも禁止される(が、細かい人数制限は記載されず)

 

ヘアカットに行ったがこちらも顧客数が減っているほか、Stage-2の規制で一人30分以内で仕事をしなくてはならないらしくカラー等できなくなっている模様。美容師さんの子供達は学校に行かせず自宅待機にしたらしい。

学校はまだ機能しているものの親のこうした判断には問題なく休みを与えてくれている。


3月26日

午後現在の総感染確認数2799人、死亡13名(昨日午後に3、今日2)

ケアンズ周辺で新たに2人の感染が確認された。両者とも、分院のある町である。今週も金曜(明日)と土曜はこの分院のヘルプに行く筈であったが、会社の上から長距離移動に関して待ったがかかった。どうやら明日も本院勤務となりそうである。

先週は売り上げ最高額を叩き出した木曜日であるが、ただの1週間で状況は凄く変化した。忙しくない。先週までは「もしコロナで営業停止になったら病欠(有休)が足りない人には前貸しをする」と会社は言ってたが、撤回した。長期化と不利益を悟ったのだろうが従業員としては撤回という事態に不安である。

 

このままだと給料貰えなくなってしまうのではないか。心配である。資格持ち正規雇用フルタイムでも心配になる程度なのだから他の人の不安は計り知れない。

 

スーパーに立ち寄った。背中がくの字のおばあちゃんがヨロヨロ買い物をしていた。心配だ。精肉コーナーの鶏肉に「一人1kgまで」の制限が加わっていた。いつも2㎏買いしているのでツラい。というか、そもそも鶏もも肉は売り切れていた。

 

各州の警察が取り締まりを強化し始めた。

海外帰国者の家の抜き打ちで訪ねてちゃんと自主隔離を実行しているかのチェック。数人が不在であることが判明。

必要最低限と見なされていない店も抜き打ちで尋ねられて店仕舞いを言い渡されている。営業を続行していたマッサージ店の店長に罰金$5000、従業員3人にそれぞれ$1000だそうだ。見せしめの意味が強いだろうが、強行的な抑止にどれだけの不満の膨らみと疫学的効果が期待できるのか分からない。相対的にそれはプラスになるのか。

 

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仕事中だが政府発表の生放送を注視する一同

 

3月27日

午後現在の総感染確認数3166人(+367)、死者13名
現在の国家規制レベルはStage-2であるが、うちの病院では近々Stage-3になるであると呼んでこれの予行演習。(看護師の一人の母親が消防署で働いているが、そこからのオフレコタレコミ曰く来週月曜(3日後)にはStage-3になるらしい)

病院内の受付を封鎖し、病院の外の駐車スペースにタープとテントを張りここを臨時受付とした。グローブ装備の受付が初見と患畜を受け取り、これを病院内に移動、獣医が診察後、電話越しで飼い主と話して治療プランを立てる。

非常にやりにくいし時間もかかるが、Stage-3になるとFace-to-face consultationが禁止になるのでこの方法しかない。

 

他の誰もやらなかったが自分は1日ずっとマスクを着けて行動してみた。息苦しくも無いし、何よりふとした拍子に鼻や口を触らないのでやはりマスクはそういった意味で有効だと思う。

 

ペットフードの売り上げが普段より伸びている気がする。物流の混乱でネット通販で買った物が届くのに時間がかかっているパターンか、買いだめの動きがあるのか。フードはほぼ定価に近い値段で売っているので減った客足の助けにはあまりならないなぁ…

 

豪州獣医師協会の粘り強い交渉の成果か、農水大臣に「獣医療はEssential Serviceである」と明記させることに成功した。これで今後規制レベルが上がっても強制的に商売停止にはならないであろう。安心要素だ。

 

大きな会社がことごとく解雇の嵐を吹かせていて本格的に経済と失業率が心配になる。
一方で客足の止まらない大手スーパーマーケットは一時的な雇用を増やしているようで、ここの求人に求職者が殺到している模様。

いずれにしても数年にわたるダメージになるだろう。

 

恐ろしい事にQLD州では明日が投票日である。このタイミングでまだ投票を行うのはどうなのか。投票会場には1.5mおきに線が引かれていて、人が近づき過ぎないようにしているが、果たして効果はあるのか。

この辺の意識はまだまだ低すぎる。こちらは気をつけていても、気にしてないオージーがどんどん間合いを詰めてくることが頻発している。

 

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病院裏の駐車場にタープを設営する院長。ここを臨時受付とする。

 

3月28日

午後現在の総感染確認数3635人(+469)、死者14名(+1)

鳥肉が切れたので買いに行く。Woolworthsでは売っていなかったがColesでは手に入った。パスタも小麦粉も米も相変わらず売り切れである。そして今度は砂糖が売り切れた。炭水化物か?炭水化物なのか!?


近所のショッピングモールは土曜日にしては閑散としているほうである。普段の1/3かもっと少ないか。店の対応はまちまちで、閉めてる店も多い中、明らかにEssentialではないタバコ屋や服屋が開いていたりもする。まだStage-2で罰金での取り締まりが無いQLD州なので緩々である。

マスクをして買い物をしている人を数人見た。初めてみた気がする。

 

ラジオでは盛んに豪州近辺に停泊している他のクルーズ船の扱いについて語っている。政府は、数十隻と停泊しにっちもさっちも行かないクルーズ船の乗客を豪州に上陸させる流れである。上陸後はホテルに14日間隔離される。「囚人のような扱いではない」と政府が言っちゃうくらい、条件としては軟禁である。

 

QLD州では今日が投票日であったが、かなりの人数が期日前投票に行っていたようだ。
しかし週末であり本来の投票日である今日はやはり人が殺到した。会場によって消毒剤が足りず個人に支給されなかったようだ。投票会場のブースに置かれているペンはヒモで繋がれているアレである。使いまわしだ。

個々が消毒していたとはいえ、果たしてどこまで効果はあったのか。消毒ってContact timeが重要なわけで、意外と奥が深いのだが。素人にやらせて効果あったの?

 

世界的にはイギリス首相のボリスジョンソン氏がコロナ陽性となった話で持ち切りだ。一方でブラジル大統領は経済を回すことを優先し、ある程度の犠牲はやむを得ないと表明。お金の無い国では仕方ないのかもしれない。

 

3月29日

午後までの総感染者数3969人(+334)、死亡16名(+2)


家にて引きこもる。外の現状不明。

 

海外からの帰国者やクルーズ船の下船者に対する14日間のホテル軟禁隔離が執行され始めた。空港で一般人を出迎えるのは大量の警察と軍服にライフル装備の国防軍の姿である。まるで戦時中か、VIPの護送を呈している。

帰国者はその場で健康診断を受けたあと、指定されたホテルへ指定されたバスに乗せられ送られていく。ルームサービスだけでこれから2週間を生きるのであろう。

 

友人達と話す機会があった。観光業に関連した職業の2人は大打撃でいよいよ先が見えないらしい。とりあえず補助金の申請をしたが、まだ連絡は返ってきていないとのこと。仕方なしにNetflixを見る毎日のようだ。

もう一人はCasualで学校の先生をしているが、こちらもQLD州は早々に1週間早い秋休みに入り事実上の学校封鎖で仕事が危ないらしい。

やはり周りの人間はみな大打撃を受けている。まだ「仕事が無い」状態なだけだが、ここから現実的な金欠が襲ってくるのであろうか。


「もしこのまま無職無収入が続いたら日本に帰って田舎の古民家貰ってマタギになるしかねぇ」とは友人談。実際、帰国せざるを得ない状況になる日本人も多いだろう。問題は帰国した先の日本も不況だと思われる点だが。

「こんなに人と喋ったのは久しぶりだ」という友人の言葉が重い。普通に話していただけだが、喉が枯れていた。

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友人達。ここから先は規制が更に厳しくなってもう会えなくなるだろう


3月30日

午後までの総感染者数4163人(+194)、死亡18名(+2)

日本ではこの日に志村けんが無くなった。悲しい。国民全員の「慣れ親しんだオジサン」の死は日本への啓蒙として大きな役割を果たすことになると思う。

 

豪首相は今日をもって事実上のStage-3に移行すると発表。

家族以外の「集会」の上限をこれまでの10人から更に下げて2人までにする、
経済難における家賃滞納者の借家からの追い出しを今後6ヶ月禁止、
70歳以上の老人はいかなる理由でも外に出るず自主隔離せよと警告、
他の国民には以下の4つの理由以外の外出をするなと強く警告:
・必要最低限の買い物
・医療的なサポートや介護
・運動(ただし集会は2人まで)
・仕事/教育(自宅で出来ない場合)

 

第三次経済刺激策として130億豪ドルを投下し、仕事が減った人への収入援助に充てることを決定。具体的にはそれぞれの会社に対し、昨年度より30%以上売り上げが下がっている場合、12ヶ月以上働いているスタッフの給料を、これまで稼いでいた金額に関係なく2週間毎に$1500ドル保証。これにより急速な解雇やStand-off(休業)による無収入者と無職者の増加に歯止めをかけるつもりのようだ。

 

現状の仕事に就いているが休職状態及び売り上げが下がり生活が厳しい人

→Job keeperで1500ドル/2週


現状の仕事を解雇され求職中の人

→Job seekerで1100ドル/2週

 

このどちらかの給付金で生き延びてくれという話である。昨日の友人達はどちらを得られるのであろうか…。

 

多分自分の会社も申請できると思われる。特にニュージーランド支部が無収入状態の今、売り上げ30%減少は到達しているであろう…。国の予算は大丈夫なのか。しかし今はそんなこと言ってられない程、国民の生活に対する不安が大きい。


尚、対策予算の一部を精神衛生やDV対策に充てる面は世界に先駆けている。評価したい。


3月31日

午後までの総感染者数4557人(+394)、死亡19名(+1)

今日も家に引きこもっているので外の状況は分からない。芝刈り機の音が聞こえる。隣りのうちのオッサンの声も聞こえる。普段通りである。

このまま経済ダメージが続けば国民の3割が4月末までに破産し困窮するとの試算が出た。どんだけみんなその日暮らしをしているんだ。

 

ビクトリア州では銃火器免許の申請が2倍に増えたため一時的に申請を受け付けなくしたらしい。みんなヒャッハー世紀末を目指しているのであろうか。

 

また、各地でアルコール飲料の購入数制限が厳しくなってきた。買い占め対策である。
オージーの買い占めは先に述べた通りの炭水化物系の他に、アルコール、DIY用品、そしてダンベル等の筋トレ用品が主である。

アルコールは言わずもがな。ビールは通貨として機能する程度に彼らには日常的に必要なものである。自分は酒を飲まないので状況は知らん。

DIY用品もここにきて大量に売れている。なまじ仕事もなく家にいるので「あ、屋根直そう」「あ、壁のペンキ塗り替えよう」が多発しているのである。

そしてダンベルの買い占め。ジムが閉鎖されたためであるが、これはもうただの脳筋としか言いようがない。

 

NSW州では機動隊を動員してビーチでくつろぐ面々を強制退去させている。「ビーチでくつろぐ」「日光浴」は外出理由に含まれない為(運動は可)

同じくNSW州、アジア系移民に対して暴言を吐き唾を吐きかけた17歳の少女が逮捕。
感覚としては大きな街ほどフラストレーションが溜まっているように見受けられる。

 

自分の会社が新たな方針を決定。病院内のスタッフを2チームに分け、交代制で働くことを決定。チーム間での一切の接触を断ち、もしも片方のチームからCOVID-19感染者が出た場合、そのチームを2週間の自己隔離、もう片方が仕事を持たせる。

リスクマネジメントであるが、これによりここから先毎週末の仕事が決定。

どうせ遊びに行くことも友人に会うこともできないので、毎週末が仕事でも支障はない。しかし新しくメンバーに入ってきた獣医師さんと一回も顔を合わせる間もなく接触を断たれてしまった。

 

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今後のうちの動物病院の大まかなシフト。自分はチームA。



 

 

 

 記録は今後も主観・客観の両視点で書いていこうと思う。

 

 

 

今年もアメジスト討伐時期です。

それは世間が新型コロナウイルスに荒れるある日の午前1時、または深夜25時と表記されるような真夜中であった。突如として鳴り響く携帯の着信音で叩き起こされる。電話当直の夜ではない本来平和に惰眠を貪る日である、不快指数が0から80ほど上がる。寝ぼけた頭で、携帯を壁に投げつけるか着信に応答するかの選択を、およそ3秒という迅速な思考により「とりあえず送信者によって対応をかえよう」という妥協案で有耶無耶にすることに決めた。

 

着信の名前を確認すると、どうやらうちの病院の看護師の一人である。

これは携帯を投げるという選択肢が消える案件かもしれない。

 

私 「Zzz…もしもし…」

看 「もしもし…夜遅くにごめんね…ついにその時が来たみたいです…」

 

相手の最初の一言に血の気が引く。この看護師氏は老犬と暮らしているのだ。最近腫瘍摘出手術もした。術後は物凄く元気そうであったが、老犬の体調がいかに急変するかは普段の仕事から身に染みるほど知っている。まさか、そうか、ついにその時が来てしまったのか、日頃から何かあったら深夜でもなんでも連絡して来いとは言ってあったが、そうか、このタイミングなのか、くそう、ちょっと前まで走り回ってたじゃないか、なんでだよ、腫瘍摘出もきれいに全部取れてたのに、しかしだ、そこは看護師氏の判断を信じるしかない、自分もプロだ、状況を聞いて、適切な判断を速やかに下す必要があるだろう。

 

看 「貴方と私が待ち望んだ『その時』です…こんな時間だけどどうしましょ」

 

 

 

 

 

 

 

よーし話を整理しよう。

 

 

 

 

 

コヤツは今なんと言った?「貴方と私が待ち望んだ」?どういうことだってばよ。自分は安楽死なんて待ち望んでないぞ。勿論看護師氏かてそこは同じであろう。つまり総括すると、どうやら「その時」とやらは何やらずっと温め続けてきたワクワクイベントであって、決して悲劇ではないということではなかろうか。

ではその時とはなんであろうか。歴史が動いたのであろうか。看護師氏とは普段から仕事で顔を合わせているし、かといってオフの日のしかもド深夜に唐突に電話でお話するような仲ではない。つまりこの電話はやはり何かしら早急な対応を必要とされるであろう緊急連絡であることは確かなのだが、その割には「待ち望んでいた」という部分が不可解以外の何物でもない。

 

いや待て。

そうだ。看護師氏と自分の間に一つの約束事があったではないか。

ふむ、つまりは…

 

……!!!

 

 

私 「状況は把握した」

私 「2秒で行くから待ってろ」

 

 

 

 

パジャマを脱ぎ捨て、サンダルを履き、

車の鍵と衣装ボックスとスネークフックを手に取り、車に飛び乗る。

この間0.3秒である(本人談)。

 

 

 

 

話は3ヵ月前に遡る。

新年になろうかという時、看護師氏が庭で飼っているニワトリやカモ、ガチョウの中で、一匹のカモが忽然と姿を消す事件が起きていたのだ。事件当日、自分も現場検証として看護師氏の庭の確認を行ったのだが、成程確かに飼育されている筈のカモの数が合わない。また、カモが逃げられるようなフェンスの穴や、猫に襲われたような暴れた痕も全く存在しないのである。当時の結論は一つだった。

 

「これはまたアイツが出たか」

「相手は4m級はあるんじゃないか?」

「まだ壁の内側に潜んでいるかもしれない」

「奴はきっと夜は動けなかったはずだからな」

 

リアル『進撃の巨人』状態であるが、当時は探しても『奴』は見つからなかったのだ。

 

 

 

 現場に到着。深夜で道も混んでいないので電話を受けてから10分である。実質2秒と言ってもいいだろう。看護師宅では元気なワンコ2匹が午前1時からハイテンションで迎え入れてくれる。元気そうでなによりだよお前ら。

 

 

看 「まさかこんな時間に来てくれるとは思ってなかった」

私 「いやそれよりあの電話はワンコになんか問題あったとか思うって」

看 「でも通じてるんだが?」

私 「いいから現場はよ!はよ!」

 

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ド深夜の植木に潜む影

 

私 「デカいねぇ…」

看 「デカいでしょう…」

 

大きさ的にはカモも持っていきかねないサイズである。やはりこいつが12月の犯人なのであろうか。いずれにしてもここはカモやニワトリのいる庭であり、ヒトのテリトリー圏内。すまないが立ち退いてもらうしかないのである。

 

街灯もなにも無いこの真っ暗闇の中、何が楽しくて深夜1時にショボいヘッドライト一つでこんな捕獲劇を演じなければならんのか。・・・楽しいからである。

 

 

ヘビの捕獲術は10%の技術と40%の自信、50%の状況で出来ているわけで、とりあえずこの植木に隠れた状況では分が悪すぎる。尻尾をガッと掴んで引きずり出s…引きずり…引きずり出s……ッ!?

 

 

重っ!?

 

 

幹にグルグル巻きとは行かないものの植木に胴体をかけられているらしく、引っ張っても引っ張ってもビクともしない。そしてあてつけかの如く総排泄腔から糞尿をぶちまける蛇。何が楽しくて深夜1時にヘビの糞尿をその身にかぶらなければならんのか。・・・楽しいからである。

 

童話「大きなカブ」の挿絵を想像して頂きたい。大体あんな感じで全体重をかけたテコで格闘すること1分、ようやく引きずり出したのだ。出てきた瞬間に思いっきり尻もちをついて朝露に塗れた泥にケツから突っ込む。何が楽しくて深夜1時に全身泥まみれになければならんのか。・・・楽しいからである。

 

 

しかし引きずり出してしまえばあとはこちらのモンだ。激おこプンプン丸と化した相手を上手い事いなして、フックで首を拘束、ガッと掴めばお仕事完了。なんかクソ重たいがそこは深夜1時、細かい事は後で気にするとして、差しあたっては衣装ケースにコイツをぶち込んで家に帰って寝る。翌日(当日)仕事だしな。

 

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寝る前の獲ったどー記念撮影。アドレナリンが引いていよいよ眠い。

 

 

っつーことで、アメジストニシキヘビです。豪州ではScrub Pythonと呼称することが多いですね。学名Morelia amethystina、豪州最大種ですが、ニシキヘビの名の通り無毒です。かなり大型になる種のため、日本では特定外来生物に指定されています。なので爬虫類マニアの一部にとっては喉から手が出るほど羨ましい存在ですが、その辺の庭に出現するんですよ…

 

 

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体長3.3mで体重5kgの雌でした

翌日(当日)、捕らえた蛇さんを職場に持っていき各種測定。

しかして今回のは良いサイズである。まず重い。うちの脚欠けてるネコより重い。実際に病院の体重計で計ってみたら5.1kg近かった。でけぇ。そりゃカモくらい持っていくわ。

そして体長であるが、とにかく力が強いのでどうにも測りづらいが、どうやら診察室の壁から壁までは余裕で伸ばせるという概算がなされた。少なくとも体長3.3m。良いサイズである。

全く必要のない情報だがうちに新しく入った新卒君にプロービングもさせてみた。多分雌だそうな。お兄さん保定係だったからまぁ彼の言葉を信じよう。途中で尻尾持ってた手を放しやがり、思いっきり足に巻きつかれた。割と鬱血するよね…締めつける力は強い。このサイズでも一人で扱ってて誤って首に巻きつかれたらワンチャン対応してる間に意識落ちるかもしれん。

 

 

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鱗は太陽光を虹色に反射して大変美しい蛇さんなのである

 

さてこのヘビは人里離れたダムの近くの熱帯雨林(いうて捕獲場所から10km圏内)へとリリースする のであるが、せっかくなので写真撮影をさせてもらうことに。

 

アメジストとは紫水晶のこと。その名に恥じず、アメジストニシキヘビは美しいのだ。パッと見た体色は黒・茶・黄色が霞んだ配色であり、いやまぁこの配色も中々好みではあるのだが、コイツの本気は太陽光の下で発揮される。

その鱗は強い光を反射すると虹色に輝き、大変にお美しいのだ。

 

原住民アボリジニの神話の中には伝説の生物にRainbow Serpent(虹蛇)というものが存在する。空に掛かる虹を蛇と見出し、大地に流れる川のうねりはその昔に大蛇がそこを通った痕だという。素晴らしき自然崇拝で神道派としてはとても共感するのであるが、さすれば虹色に輝くこのアメジストニシキヘビは神の化身か使いか。

 

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特徴的な頭のウロコの大きさが同定時に一番頼れる

アメジストニシキヘビは頭のウロコが特徴的に大きい。これが視線を引くのでちょっと可愛い表情に見えるのである(※個人の見解です)。

そしてこの蛇は昼も夜もギョロ目感がとても強いため、可愛い表情に見えるのである(※個人ry

 

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アヒル口

アイドル顔負けのアヒル口である。

これはもう可愛さの塊りといって差し支えないのでは(※ry

 

 

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お写真いっぱい撮ってごめんね、森に帰ろうね

 

お写真撮影のほうも満足させて頂いたので、ダムがある近くの山へ逃がしに行く。

捕獲場所からあまり遠くにはいかないのがポリシーである。あくまで行動範囲内の移動にできれば留めたい。本来は人間が関わってはいけないのが野生動物なのだから、ヒトの手で遠くへ遺伝子や病気や寄生虫を移動してしまわないように気を配るべきなのだ。

 

 

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後ろを振り向くこともなく、シューッ!と威嚇を踏まえて山に消えた

 

夜は凍えるかもしれない

ひもじい思いをするかもしれない

天敵に襲われるかもしれない

 

しかしそこには世界と自由がある。

 

この大自然の全てを自分の物と主張し、

行きたいところへどこまでも行く権利がある。

 

人と家畜が失ったそんな世界と自由に野生動物を「還す」際に、憧れるのである。