とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

セキセイを 追いし内陸 三千里 ~4‐5日目~

 

 

4日目の行程、参考マップ。

 

7月18日 (4日目)

朝日が出る前の午前6時からスタート。

予定通りに日の出前の朝6時05分にテントを這い出す。気温は7℃だが寒さ的には問題なし。テントをキャラバンパークに放置したまま車に乗り込み、ハイビームが地平線の彼方に吸い込まれていく荒野へと車を走らせる。

 

日の出は0720。凍てつく内地を照らす朝日はとても暖かい。

早朝の給水のために水場に来るであろうインコ達を待ち伏せるために水場近くまで車で侵入して鳥達が行動を始めるであろう日の出を待つ。7時20分に日が出ると、ちらほらとオカメインコのペアが空を飛ぶ姿を確認できるが、そのままジッと待つこと8時までこれといった動きが無い。果たして3密を避けているのであろうか。ご時世である…。

 

キンカチョウ達は不定期に群れで現れてお喋りして消えていく。

いくつかの水場へと場所を変えて9時30分まで粘ってみるものの、期待していた「セキセイの群れ」はついに現れなかった。そもそもここまでの道中で内陸の旅なのにやけに緑が濃いなというイメージを持っていたが、どうやら今年は雨量が多くそこら中に水場が散発しているのであろうか、鳥達もわざわざ一ヵ所に集まって水分補給をする必要性が無いのかもしれない…。

 

散発的に小さな群れで現れるセキセイ達に挨拶する。

水場で大きな群れは形成していないが、散発的に小さな群れが地面に降りて採食をしていたりそのまま木に留まってお喋りしている姿を、まったりと帰路に着きながら観察する。

 

オカメインコも朝食タイム。

朝食タイムのセキセイ・オカメインコを堪能して、まったりとテントまで戻り、さくさくとテントを畳んで10時15分にはBouliaの町を出発。ここからは気づかぬ間に伸びに伸びまくってしまった1500kmという道のりを一気に帰る旅になる。

 

Bouliaにて給油、28.6L@239c/L。

燃料にはある程度の余裕があるが次の町が200km以上先であることを踏まえてBouliaのガソリンスタンドにて給油。ここまでくるとガソリンの値段も中々凄いが、途中で何かあってガス欠になると悲惨なので保険だと思うしかない。

 

道中はとにかく何もない。地平線しかない。

Bouliaを出て北東に進路を取る。まずはWintonの町を目指すが、道中は基本的には地平線しか存在しない。この地域にはMin Min(ミンミン)と呼ばれる発光体の目撃情報が多発しており宇宙人来訪のメッカ、みたいなノリでその手の人達には有名な土地だが、ぶっちゃけこうも何もない地平線の土地だと、そりゃ夜中に雷なり他人の炊いた火なり流れ星なりを見れば「なんか発光体が飛んでた!」となるだろうよなぁ…。

 

カンガルーの親子。運転手ワイ、カメラを構えるも無事ピンボケ。

道中特にハプニングは無し。強いて言うならカンガルーが登場。実は自分の住んでいる地域はワラビーばかりでカンガルーが生息していないので内陸で出会うと地味にテンションがあがる生物なのである。オーストラリアは広いからカンガルーやらコアラやらがいない地域も多いのよ。

 

Wintonで給油とソーセージの補給。

13時45分、Wintonの町に到着。ここは2年前の旅のほぼ最終目的地であった町。給油28.1L @239.9c/Lを行った後、前回も行った肉屋で晩飯となるソーセージを購入。前回は数種類の謎ソーセージが並んでいたが今回は2種類しかなかった。そのままドンドン北東へ進みHughendenを目指すことに。

 

Hughendenを目指している途中で走行距離は2000kmに達した。

WintonからHughendenの間にもコレといった場所は無いのでどんどん進む。何が怖いって、この道中には前回の旅以来ずっとビビり続けている極寒の地Corfieldが存在しているため、我々としてはとにかく距離を稼いでCorfieldよりも更に先にキャンプ地を構えたいのである。

 

Corfieldを通過。町唯一の酒場は閉まっていた。

道中期待していたエミューにも出会えず、つまりは道草を食うこと無く走り続けた結果とても良いペースでCorfieldのキャンプサイトを通過。この町唯一の、というかこの町を『町』として機能させているであろう酒場は閉まっていた。廃れていないであろうか…心配である。

 

ここをキャンプ地とする。

Hughenden到着が16時10分、そこから10分ほど町から離れたブッシュの中に車を突っ込んで、ステルスキャンプの構えに。他に人もおらず静かで平たい素晴らしい立地である。

 

テントを立てていると、

「おーい!ちょっとこれ見て!!」

との声が奥から聞こえてきた。

 

先住のヒトが居た形跡を発見。

なんだなんだと覗きに行ってみると、なんということでしょう、そこには人工物を一切使わず巧妙に組まれてカモフラージュされた原始的なシェルター()が放棄されているではありませんか。

「これ僕ら夜に喰われるんじゃないですかね」

「しかしすげぇ拘って作ってるなァ素人の仕事じゃない」

 

シェルターに飽きたのでソーセージを焼いて食らう。

何となく芸術点の高いシェルターを壊す気にはなれなかったので周りから薪を拾ってくると、既にソーセージをフライパンに投入している姿を確認。やりたいことをやりたい人がやりたいようにやる旅です。

 

 

ソーセージと白米を食べながら21時まで駄弁る。

ここの木は適度に乾燥しており煙も出さず大変よく燃えるため焚火がとても捗った。飯を食いながら「焚火を囲みつつの暇つぶしに一番最適なのはマシュマロ以外に存在するのか」という大変学術的な議題について討論した結果、干し芋、焼きとうもろこし、チーズ、ザリガニなども焚火で調理しつつ暇を潰すのに適しているのではないかという案が出た。そうこう言っている間に周りはどんどん暗くなり、流れ星を確認した僕は「仕事に戻りたくねぇ」と願い事というよりはただの愚痴を心内に唱えながら寝袋に潜り込んだのである。

 

 

7月19日 (5日目)

5日目の行程、参考マップ。

 

最終日の朝。既にオカメとセキセイの影はない。

のんびりと朝6時30分の起床。気温は12℃のとても平和な朝である。ゆっくりと朝の焚火を起こし、お湯を沸かして茶をしばいた後でテントを乾かしつつ畳む。最終日の行程は沿岸沿いを走るだけの単調でハプニングの期待も持てない消化試合である。

 

Hughendenにて給油。17.97L @216.9c/L。

Hughendenの町に少し戻って給油。無人給油所である。そのままCharters Towerを目指して東に進路を取り、勢いでTownsvilleまで午前中で一気に抜ける。最終日なので強行で良いのです。

 

フィッシュ&チップスの昼食。可もなく不可もなし。

Townsvilleまで戻ってくるとそこにはもう文明が溢れているので、なんとなく店の名前の響きで選んだフィッシュ&チップス屋で昼食。なんというか、可もなく不可もない味であった。リピートすることはないであろう。Fried Mars Barなるチョコバーを油で揚げたヤバ過ぎる食い物は、想像通りの味であった。

 

最後の給油。Inghamにて。

この旅最後の給油。沿岸まで戻ってきたのでガソリンの値段もようやく200c/Lを切った。最終的なガソリン給油量は129.14L、総額$288.33なり。ガソリンの高騰真っ只中であった。

 

総走行距離。

走行距離は2974.9㎞と、おおよそ3000kmの旅となった。当初は2000kmの予定だったので異様に増えている気もするが、誤差の範囲である()。鳥を探して頻繁に停まっていた割には燃費が20km/Lを超えていたのは流石。

 

 

飛び石でフロントガラスはちょっとひび割れた。

 

内陸は楽しい。やはり一定の期間毎で行くべきである。そこには夢と過酷さと野生動物達が詰まっているのだ。

 

転職をします。

転職します。まぁ職種は変わらず伴侶動物臨床獣医師ですが、職場を変えます。所謂ヘッドハンティングというヤツが、良いタイミングで嚙み合ったので受けてみようと思ったまでです。

 

 

転職という考えに至るまで

 

事の発端は一人のしがない獣医学生でした。今年の1月頃、夏季休暇間の研修としてうちの病院に訪れていた学生と何気なく就職の話になった時に、その学生が「意外とAquaculture(水産事業、養殖業)の仕事の給料が良い」みたいな話をしており、その流れで「求人情報見てみると面白いですよ!」なんて言われたのです。

 

その影響で、その時は暇な時間の合間もあったので本当に何気なく獣医師用の求人サイトを覗いてみたのですよ。そうしてみたらどうでしょう、一つとても面白そうなお仕事が掲載されていたのですね。

ちょっとその内容が気になったので本当に冷やかし程度に求人元に履歴書くっつけてメールを送ってみると、音速で返事が来ると共に「気になるなら今からちょっとインタビューみたいなことしよう!」との一文が。

 

求人への応募って様々な形があると思います。手書きで履歴書書いて証明写真つけて郵送してリクルートスーツを着て面接日に面接官に囲まれる中であれやこれや質問に答える、みたいなモンを想像される方には伝わりにくいのですが、オーストラリアの臨床獣医療現場における職探しってのは実にカジュアルです。求人情報を見つけて(大抵は口伝かネットです)、メールで履歴書(PDF、勿論手書きじゃない)を送り付けて、それが通れば「インタビューしよう」と言われるのです。そしてここはオーストラリア、国土が馬鹿みたいにデカい国なので一概にインタビューと言っても軽い気持ちで先方の職場に赴こうとしたら飛行機を調達しないといけません。複数の候補者を飛行機で呼び寄せるなんて無理があるので、こうした「インタビュー」も最近ではZoomなどのオンラインで行われます。

とにもかくにも冷やかし同然で送ったメールがあれよあれよと言う間にインタビューにまで発展してしまい焦っていたのが今年の2月です。仕事が終わり、家に帰り急いでPCのカメラをセッティングして4時間前に決定した突然のインタビュー。話すことなんて決まっていませんが、そこはまぁ取り繕っても仕方がない世界ですので自然体で臨んでみると、中々に好印象では無いですか。仕事内容も面白そうだし、先方の人柄もとても良さそうで楽しそうだな、というのが正直な感触でした。ここで事態は意外な方向に向かうのですが、インタビューも中盤というところで先方が訪ねてきたのが、

 

「で、もしうちで仕事するならいつから入れる?」

 

当たり前ですが先方は求人中の身です、戦力はすぐに欲しいですし、他の求人者達だって連絡待ちで待機しているので早々に答えは欲しいわけです。しかしこちらはこちらで今や肩書きだけだったとしても分院長の身、そう簡単に他のスタッフを放り出してホイホイと転職できるわけでもありません。いやまぁ法的にはできるんですけど。

 

「うーん…僕の下についてるスタッフもいますし…引継ぎも考えると3ヶ月は欲しいですけどねぇ…」

「だよなぁ…残念だけどウチはそこまで待てないからなぁ、今回ば別の人を採用することになると思うけどキミ面白いから何かあったら今後も連絡取っていいかい?(定型文)」

「アッハイ」

 

こうして、ちょっと面白い話から発展したインタビューは「今回はご縁が無かったルート」に無事分岐したのですが、実に得るものは多かったのです。この一件にて自分の中では以下の疑問点及び問題点が急浮上してきました。

 

  • 6年間同じ職場に勤めている点と、立場。

流石に日々に真新しさが少なくなってきているということに気づきました。また「分院長」という立場は良くも悪くも安定を求められており変化が生まれ難いという面も働いています。これまでは自分の上司にあたる院長や、経営体制自体がコロコロ変わっていたので新鮮味が続いていましたが、ここ1年以上は「安定」が続いており自分の成長が遅れていることを感じ始めました。

言っては悪いがなかなかの田舎であるため選択肢が少ないという問題点に直面しました。地域の求人はどこもあまり変わり映えしない伴侶動物臨床。研究職や特殊職、専門職などが皆無なためにこうしたものに気軽に触れる機会も無ければコネクションも生まれません。上記した仕事に関しても、距離的に近い場所であればパートタイムでとりあえずやってみる、などの選択肢も生まれたでしょうが、土地的に選択肢が制限されているという部分に気づきました。

  • 自分の価値観という点。

このまま伴侶動物臨床だけの継続で良いのか、というそもそもの疑問が生まれ始めます。勿論嫌いではないし面白い分野で毎日充実していますが、圧倒的な熱量を持って接することのできる分野は他に存在するとも感じます。少なくとも10年後も同じ環境で同じことをしている自分が想像できないことは確かです。

 

経営陣に直談判する

 

 

気付いてしまったからには善は急げです。グダグダと言っていても仕方がないので行動にうつします。2月のインタビューで主に気づかされたのは立場という問題点、選択肢の少なさという問題点、そして価値観の3点です。これらの問題点はそれぞれが中々に曖昧なので、これらをある程度ハッキリと明確化させようと思い立ち、上司にあたる本院長とエリアマネージャーにメールを送り三者面談のセッティングを求めました。普段あまりこうしたことを申さないからなのか、先方もこれをすぐに受け入れ3月1日にはミーティングが行われます。

 

「今日はミーティングのセッティングをありがとうございます。単刀直入にまず言いますが、今日は自分にそろそろ転職の意思があることをまず伝えるために集まっていただきました」

 

開口一番でまずこれを伝えました。問題点①である「立場」の明確化です。上記のインタビューにおいて自分の後ろ髪を引っ張った一つの要因が分院長という立場であり、これを直属の上司陣に「転職の意思がある」と今から伝えておくことで自らの立場を「安定を求められている分院長」から「そろそろ会社から離れるかもしれない分院長」に変えておきます。

これを伝えた時の院長の顔は印象的で忘れられません…あからさまにテンションが下がった悲しそうな顔をしており、自分は結構大事に思われていたのだなぁと実感すると共に申し訳ないという気持ちがこみ上げてきますが、

「そうか…お前が居なくなるのはとても悲しいが仕方がないことだ」

との返事をもらい感心しました。人柄的に怒られることはないとは思っていましたが、それでもある程度の引き留めや再考の懇願はされると覚悟していたので、あまりにあっさりと転職を意思を認められてしまい逆に出鼻を挫かれた感覚です。院長は本院と分院の両経営権の一部を持っているという面も含め、自分が辞めると人材・金銭的な損害は結構なものになる筈ですが、それでも予兆もないまま突き付けられた転職の打診に対して、第一声で僕自身の意思を真っ先に尊重できた彼は凄い人なんだ、と、改めて感じた瞬間でした。

 

「ちなみにこの転職意思については他の連中に言います?黙っておきます?」

「うーん、ここの3人だけの話にとりあえずしておいてくれる?」

「そうねぇ…」

「はい」

ここは少し気になっていたんですが、自分が転職の意思を表明すれば多かれ少なかれ病院チーム全体に不安と動揺が走ることが容易に想像できるような環境だったのです。首脳陣としてはやはり今から無駄に波風を立てても仕方ないという判断だったようで、この話は公開しないことに決まったのです。

 

 

しかし転職先も決まっていない状態で転職打診をザックリするためだけにこんな仰々しいミーティングはセッティングさせません。ここでもう一つ明確化させたい価値観についての話を続けていきます。

 

「で、転職の意思はあるのですがいつどこで何をしたいのか等は現状全く決まっておりません。現在の僕は僕自身の価値観(Value)を模索している最中であり、その過程で新しい環境や仕事に価値観を見出した場合に転職する意思があるという立ち位置にあります。こうした状態において今一度、現在の自分の価値を見つめ直しこれを比較対象として今後の方向性を決めていきたいのです」

 

「更に具体的に言うのであれば、転職という視点を持っていることを伝えた現在、御社は僕の雇用主として僕にどれくらいの価値を見出しているのか、給与として再度表していただきたいと思っています」

 

「勿論、給料だけが僕の求める価値ではありませんが、それは絶対的に価値観の一部に含まれている要素でありこれを明確化していただきたいです。『どうせもうすぐ辞めるのだったら無駄に給料を増やす必要はない』という考え方とても良く理解できますし受け入れましょう。逆に、昇給したからと言って転職しないという保証も絶対にしません。要は僕の現行の価値が高い場合、それを上回る価値を感じさせる就職先が現れにくくなるかもしれない、そう申しています」

 

価値観とは難しいものです。自分が本当にやりたい事、地位や時間や人間関係など非常に多岐に渡りますが、会社として雇用主として一つだけ明確に数値で示せて、大多数の就職者の価値観の一部に絶対的に含まれている要素である「給料」というもので、転職を考え始めている社員である僕の価値観を見せてみろ、そう要求したわけです。

簡単に言ってしまえば昇給の問い合わせですが、ここは強気に行きます。遠回しの脅しでもありますね。特に僕の場合はチェーン展開している会社の傘下にある雇われ獣医師なので、人情とかそういうものに訴えるというよりは分かりやすい損得勘定で勝負をかけた方が良いと踏んでの揺さぶりでもありました。

 

結果、このミーティングの1週間後には給料は結構馬鹿にならない勢いで上がったのです。6年間勤めていてクライアントのフォロワーも多く地域制も理解している分院長の給料を上げて少しでも引き留めにかかるか、新しい人材を見つけて配置するか、どちらのほうがコストが少なくリターンが大きいか考えた結果だと思います。

軽く強請りですが、強請れる状況にあれば強請っておかないと大きな会社ってのは調子に乗るんだなと逆に思いましたね…そこまで一気に昇給できるなら最初からもうちょい上げておけよ…という気持ちが出てきたもんね、正直。

ただしここで会社側が「こいつどうせ辞めるんだから昇給いらんだろ」という判断をしていたら自分の中の『現行の雇用者に対する義理』といった価値観が一気に暴落していて、近隣のライバル病院の求人すら漁っていたことでしょうから、やっぱりある程度強気になってでも自分の価値ってのを確かめるのは大事だなぁと。

 

日本に帰って獣医師に会いまくる

 

転職が視野に入り、しかして結構ビビる勢いで昇給した矢先、今度は溜まりに溜まってしまった有給休暇を消化するために(やったぜ昇給後の消化だ)4週間の有給を取って日本で遊び呆ける、という時期に突入したのが今年の5~6月です。ちなみにこの間は割と昇給で満足感が出ていたためアクティブに転職先は探していませんでした

 

日本に一時帰国したわけですが、最終帰国がまさかの14年前という干支にすら余裕で周回遅れを許すオカシイ勢いで日本に帰っていなかったので「旧友」なんてモンにもほぼ存在を忘れ去られているのですが、じゃあ何をしていたのかというとこれはもうオンライン(というかツイッター)で知り合った日本の獣医師連中に片っ端から会ってオフ会という名の「飯奢られ会」に図々しく参加しまくっていました。いやぁ、上野動物園に伝説上の生物みたいな格好したパンダが来た!みたいなノリで皆さん会ってくれるし、ふれあい動物園でゴハンを与えよう!みたいなノリで皆さん飯食わせてくれるんだもの、楽しかったなァ()

 

そんなこんなで沢山の獣医師と出会い、症例相談から人生相談まで色々とお話を聞いてきたわけですが、いやぁ面白いことにね、自分と年齢が近しい30代前半の獣医師達に会うと、十人十色の経歴や立ち位置にこそあれ、皆が共通して「そろそろ転職」って言ってたんですね。やはり臨床勢は6年も経つとある程度の手業や知識は獲得しており、金銭的な余裕が少しでき始め体力にも余裕がある今こそ人生設計の一環として次の一手を指しに行かねば、と考えるものなんだなと感慨深く話を聞いていたのですよ。

普段は聞けない院長勢の苦悩や開業の流れ、企業病院の雇われ獣医師の話や、企業で雇ってる側の獣医師の話、非臨床勢の楽しい話、シェルター勢の視点、研究職達の熱意ある謎勧誘と、様々な人と話していて改めて感じたのが2つ。まず年齢的にやはり転職を考えるのは割と自然でありここで動くべきだと感じる面。そしてもう一つが「改めて獣医師ってすげぇ多岐に渡った仕事あるなぁ」という面。

 

この日本への一時帰国で沢山の人の話を聞くことで、昇給によって少し熱の冷めた転職欲が再び再加熱していったのですが、日本からオーストラリアへ帰国する3日前、ファミレスのハンバーグってなんでこんなに美味ぇんだ!という普通の日本人には意味分からんであろうテンションアゲアゲポイントにあった真っ最中、一本の唐突なメールで事態が再度動き始めます。

 

唐突なヘッドハンティング

 

ハンバーグを食べ終えて鉄板の上に残った和風きのこのソースをひたすらフォークでかき集めては口に運ぶ不毛な作業に精を出していたら、唐突に携帯がアラーム音を発し1本のメールの受信を知らせてきました。舌の奥にかすかに感じるシメジの旨味を噛みしめながらメールの差出人を見ると、どういうことか、それは1.5年前にうちの病院を離れてシドニーで開業している元同僚獣医師からじゃないですか。

 

実はコイツ(元上司ですが「コイツ」と呼ぶ仲)、ここ1.5年の間に何回か唐突なメールを寄越してきていたのです。大体いつも週末の夜なので酔ったノリでメールを寄越してきていることは容易に想像できるのですが、内容はいつだって「なぁ俺の病院で一緒に働こうぜー」です。今回のメールも正にそれでした。「時給〇〇出すぜ!残業も1分単位で出るぜ!オンコール無いぜ!こっち来いよぉー!」といういつものノリです。こりゃ確実にフットボール観ながらビール飲んでます。

 

唐突ですが皆さん麻雀はご存知でしょうか。知らない方は意味分からんと思うので読み飛ばしてもらって良いのですが、自分は割と麻雀が得意だと自負しております。その打ち筋は基本は堅実な面前派で、聴牌の気配を感じ取ったらねちねちと回し、駄目だと判断すれば降りてとにかく振り込みを避ける『硬い』打ち筋なんですが、同時に麻雀における非科学的で一番アツい要素である『流れ』を見極めることも得意だと思っております。流れが来たらその堅実な打ち筋が一変、敢えてのペンチャン・カンチャン待ちも辞さない、初手赤牌強打も地獄待ちも大好きという変則的な打ち筋です。そして誰かに流れを持って行かれている場合はこれを引き寄せるための安上がりや鳴き潰しも辞さない特殊な麻雀を打ちます。そもそも自分に麻雀を仕込んだ連中が元々ヤクザ麻雀打ってた人達(つまりそういうこと)なので仕方ないですね。

 

話がずれてしまった。やはり読む必要はなかった。とにかく自分は麻雀に「流れ」があるように、人生にもこうした「流れ」は存在すると思っています。そして自分の感覚が、このタイミングでいつもの内容を送ってきたこの元同僚のスパムに近いこのメールを「流れ」なのでは無いかと感じ取ったのです。真偽のほどは分かりませんが、このタイミングにこの内容、乗っかってみろと直感が囁くのですよ。

 

「また飲んでるでしょ!ところでいつもの如くの誘いだけど、今までは軽くあしらってきたから貴方もこの返答は想定してないと思うけどさ、実は今年は転職を考え始めているから詳しい話を聞きたいよね」

「お、本当か!一応他には内密にしてもらうとして、今度一回ちゃんと話そう」

「おk、オーストラリアに帰ってからが良いから1週間後に連絡するわ」

「ホリデー楽しんで」

「うーん、なんか考慮すればするほどアリに思えてきたぞ、とりあえず連絡する」

 

最終勧告

 

遊び呆けた4週間が終わった6月下旬、オーストラリアに帰国して最初の仕事の日。普段から馬鹿みたいに忙しいけど流石に4週間空いた後だと更に忙しく感じるのはブランクのせいではなく、自分が休んでいる間に獣医師が2人辞めて、1人が産休に入り、もう1人も辞表を出してタイムリミットが近づいているという状況に陥っていたのです。つまるところ、自分が転職意思を示した時期には他に5人居た獣医師が、あれよあれよと言う間に気づけば自分と院長の2人しか正規メンバーはいないような状態になっていたのです。こうなると分院を開いている余裕もなく、帰国後は自分も本院勤務となっており慣れない病院環境と濃縮された診察に追われていた疲労がのしかかっていたのだよ。

そんな濃厚な1日が終わり、看護師達が帰ったあとでせくせくとカルテ記入に勤しんでいたところ、やはり隣でカルテを書いていた院長が唐突に聞いてくる。

 

「で、あれから転職についての気持ちはどうなんだ…?」

「あー、それですけどね、やっぱりそのうちに転職はすると思いますね。概算だと10月くらいまでかもしれないですよ」

「やっぱりかぁ…まぁそうだろうとは思ってたけど10月かぁ…キツイなァ」

「エリアマネージャーはちゃんと人材確保頑張ってます?今ここで自分抜けちゃうといよいよ院長1人でマズいですよ…?」

「まぁ昔は1人でやってたから最悪しょうがないけど、エリマネは昇給したから転職考えなおしたとか考えてそうだよなぁ…」

「え、それ3月にわざわざ言っておいた意味なくなるじゃないですか。意思表示の念押しメール送っておいていいッスかね」

「そうしなさい。Bccを俺のメールにも送っておいて」

「CcじゃなくてBccなのね…」

「こちらもエリアマネージャーの出方をちょっと伺いたくて」

 

なにやら院長も院長でエリアマネージャーとバチバチ水面下でやりあっているようだが、ワイの知ったことではない。それよりも、最早獣医師が2人という厳しい体制になっているこの状況で「いきなり退職届出してきた自己中心的なヤツ」という立ち位置は絶対に嫌なので、エリアマネージャーにメール。

「エリマネへ。軽く近況報告的な意味でメールします。現行で自分の転職意思に変わりはありません。時期などは未定ですがどこかのタイミングで今の職場と地域を去ろうと考えていることだけ再度把握しておいてください。もし予定が立てば貴方と院長には真っ先にお伝えします」

 

対する返信。

「Hi!貴方からこういう難しい問題を率先して話してくれることは嬉しいわ。話してくれればこちらも色々とサポートできると思うから何でも気軽に相談してね!」

 

難しいのは分かっているしある程度頑張ってくれていることも承知しているけど、貴方にできる最大限のサポートは人材の確保と派遣なのですよ…僕ぁ今の病院自体に文句があるわけではないので、エリマネにできる範囲は少ないのよ…

 

再びのインタビューと誘致

 

その一方で引き抜きを狙う元同僚。自分がオーストラリアに戻ってきたと知るや否や間髪を入れずにまず電話凸。

「よぉ相棒!とりあえずあれだ、俺と話す必要はないと思うからうちの経営者とちょっと話してみてくれ!」

「お、おう、おおう!?」

「やぁこんにちは、初めまして」

「あ、え、どうもぉ!?」

「突然だけどうちのチームへの加入に興味があると聞いてね、とりあえずこっちに来て病院見たりチームに会ったりしてみないかい?」

「あ、いや、そうですなぁ!」

「8月の12日から14日までが休みって聞いたから、そこで飛行機のチケット取ったからあとでメールで送るね」

「あ、どもども…」

「じゃあ後は合って色々話そう」

「まぁ気楽にとりあえず来てみなって。なんか違うなと思ったらそれはそれで旅行だと思ってくれればいいからさ」

 

…もしこれが知らない人であったなら新手の宗教勧誘かマルチ商法かと疑わざるを得ない展開の速さであるが、残念なことに元同僚のコイツはいつだってこういう勢いで生きているので仕方がないのです。

そんなこんなで時間はグングン流れて8月。

 

与えられた飛行機のチケットで飛んだ先はオーストラリア第一の都市シドニーケアンズという田舎とは比べるだけ失礼と言わんばかりの大都会です。何故か飛行機チケットのオプションについていた機内食を頬張りつつ、目下に広がる家々の山と例のオペラハウスなる建造物を観ながら寒さに震えつつ元同僚とその友人である経営者に会う。病院を見せてもらい、現在のスタッフと挨拶。「貴方のことは話で聞いてるわ!いつウチに来るの?早く来て頂戴!」の一言を放ったオバちゃん獣医師の顔を見て安心する。あぁ、唯一分からなかった部分である職場の雰囲気もこれなら大丈夫そうだ。

翌日には実際のビジネスの話。とは言っても個人経営であり新病院はまだ建築中につき、契約書は簡単なものに。知ってる仲でなければここも警戒するけど、まぁここは信用しようじゃないか。それに獣医師免許は便利で、最悪何かが間違った方向に向かっても仕事はすぐに見つかるしな。

 

転職先が決まる

 

ということで、来年からシドニーに転職します

仕事内容は変わらず伴侶動物臨床獣医師なので、ぶっちゃけ仕事の内容はそこまで変わらないのですが、このヘッドハンティングを受けた理由は多岐に渡ります。

  1. 給料単純に一気に上がります。まぁ都会は生活費もめっちゃ上がるので節制生活は変わりませんけどね。
  2. オンコールが無い。ぶっちゃけこれのQoLの爆上げ具合は僕の求める「価値観」の上昇に大きく貢献すると思われます。
  3. 都市部の獣医療との関わり。これまで自分は「田舎の獣医療」を極めてきたと自負しています。周りに専門病院も救急病院も無い環境において、手元に来た症例全てを自らの手で何とかせざるを得ない環境における獣医療です。これのメリットは追い込まれた環境故に他人に投げ出さず症例に向き合わざるを得ないため、知識も手技も上達するという面ですが、逆に言うと求められているStandard of Care(標準治療)の上限値が低く設定されているというデメリットでもあります。ここまで6年は学びのメリットが高かったと思いますが、これ以上この環境に浸かっていると自身の考える標準治療のレベルが制限されてしまい、視野の狭い危険な医療を展開しかねないという部分に焦りを感じていました。ここで「都会の獣医療」を吸収することで、両方の視点から物事を観れる多角的視野を得られることを期待します。
  4. 様々な分野との関わり、コネクション。都市部には専門医や二次病院、大学などの各種研究施設、保護施設から動物園といった「様々な獣医師の職場」が存在しており、こうした新しいフィールドに関わりを持てることに期待します。自分自身の価値観を追い続けている現在、どこでどういう分野や人に興味を持つか分からないので、選択肢が多い場所に身を置くことべきだと考えます。

 

一方でデメリットは友人関係の再構築が必要な面と、野生動物との関わりが減りそうな面、あとはとにかく家賃が高くなることですかねw

最終的には価値観とメリット・デメリットを天秤にかけて、シドニーへの転職に有意性を感じたので、あとはもうシドニーでもメルボルンでもブリスベンでもぶっちゃけ良いのですが、そこはまぁ流れに乗ってみることにしましょう。

 

 

退職届を出す

 

シドニーから帰宅したのが昨日の午後ですが、その日のうちに退職届を作成。法律的には退職4週間前に提出すれば良いのですが、そこはやはり早めに伝えておいた方が会社側には良いので即日行動します。

問題は自分の転職意思を微塵も感じ取っていないであろうナース達です。内密にしろと言われたらこれはもうおくびにも出さないくらい秘密を守れるタイプの人間なので、今年の始めからあった転職意思は院長とエリアマネージャー以外には全く見せていないので、ただでさえ少なくなった獣医師で、6年という長期間働いていた自分の退職届は大きな動揺を生むと思われるので、退職届とは別に「状況を把握していなかったスタッフ達へ」という題で別に手紙を一筆したためました。内容は要約すると『事は1月から始まっていて、3月には院長とエリアマネージャーに話は通してたんやで、急な事に思えるかもしれんけどずっと前から話してたんやで』です。

まぁ要するに『獣医少ない中で辞めるけどこれワイのせいじゃないからな!会社を恨め!』という責任転嫁ですが、この業界ナースに嫌われたらオシマイなんでそこはハッキリと無罪を主張しておきましょう。だってまだ2ヵ月は普通に仕事するんだもの。

 

朝の7時に病院に行き、マネージャーを捕まえて上記の2枚を手渡す。今日は仕事じゃないのに早朝から封筒持って小部屋に呼び出してきた自分を見て全てを察してたマネージャーも流石に歴戦ですね。頂いた言葉は「去っちゃうのは残念だ」「でもそういう時期だと思う」「次のステップに向かうことは正解」といった内容。院長に続いて貴方も凄いよ、責任転嫁の手紙はいらなかったのでは…。物理的に手紙を渡すと同時に、同じ2枚を院長、エリマネ、分院のマネージャーにもメールで送信。

全員にバラして良いよと言ったので、その場にいたナース達には直接退職の旨を伝える。こちらもやはり「寂しい」「悲しい」「頑張って」「良いことだ」という意見ばかり。いやー、責めたり怒ったり不安と吐露されるかなと思っていたんですけど、これ日本人的な感覚だったんですかねぇ。良い奴らです。

 

 

残り8週間、スムーズに仕事からフェードアウトできるように頑張って行きましょう。

そして新たな生活の基盤を作るための書類作成だ免許更新だ家探しだ家の売却だと、問題はまだまだ山積みなのだ。

 

 

セキセイを 追いし内陸 三千里 ~3日目~

 

 

 

3日目の行程、参考マップ。

7月17日 (3日目)

Cloncurryの朝。気温は10℃。

前日よりは気温が下がった感覚はあるものの快適な朝を迎える午前06:30。寝袋2枚作戦は安眠を約束してくれるようである。ここは水道がある、つまり洗い物ができるので気兼ねなく鍋類を使い朝食にスープを頂く。

 

ミドリマキエインコ。まだ暗すぎて綺麗に撮れない。

朝食を食べていると目の前の水道から垂れる水滴を求めてCloncurry Ringneck parrot (Barnardius zonarius macgillivrayi)が登場。名前の通りこの周辺にしか生息していないインコで、名前の通り首の周りに白い輪がある。なかなかに癒しの空間である。何故レビューでボロクソ言われていたのかは未だに分からない。

 

この人はいつだって鳥を追い地を這っているんだ。

07:30頃に行動開始、本日の目的地は射程圏に収めてしまったが故に急遽行くことになった陸の孤島Bouliaである。Cloncurryの町のガソリンスタンドで安全を期して20L(@235.9c/L)給油して、まずはMount Isaを目指す。

 

Mount Isaにて給油。ガソリンがOPALに代わった。

08:45にはMount Isaに到着。内陸の中では大きな都市という感じの場所ではあるが、そこはやはり田舎の中ではデカいというだけであり日曜日の今日は大手スーパーを含めてほぼ全ての店が開いていない。足早に「今後400km給油場所がない」地へと足を延ばすべく、またしても給油する。23L(@219.9c/L)、満タンである。Mount Isaまでくるとガソリンの種類がOPALに代わっていた。これはアルコール依存症の先住民達がガソリン嗅いでラリるのを防ぐために、ガソリンとしての機能を維持しつつ芳香性化合物を1/5に抑えている内陸特有の謎燃料である。

 

Subwayを購入。3日ぶりの野菜。

Mount Isaを離れるとまた文明からかなり遠のいた生活が続くので、自分の希望でサブウェイに立ち寄り朝食。野菜全部乗せで食物繊維とビタミン類を補給する。冷蔵庫の無い生活が続くのですぐに野菜不足に直面するのである。摂れるときに摂っておこう。

 

赤い大地を突き進んでいく。

サブウェイを齧りながら車はどんどん南下していく。いよいよ本格的に乾燥した土地にはなってきているのだが、それにしては緑が濃い。やはり今年の雨量は多かったようで植物が生き生きとしている。

 

セキセイインコの群れ。いきなり飛び出してくる。

唐突に道端の茂みが道路に飛び出してくる。緑色の塊であったそれはセキセイインコの群れだ。なんとか当てることもなく車を停車するが、しかしてBouliaに向け始めてまだ5kmも走っていないのにもう出てくるか。期待感は上がる。

 

ハッチバックでも行けるもんだなァ。

どういうことかBouliaに向かうにつれて対向車の数がどんどん増えてゆく。あとで知ったことなのだがBouliaでは前日の土曜日に「キャメルレース」なるラクダの競馬、まぁここは競駝(けいだ)とでも呼んでおきましょうか(実際にそう呼ぶらしい)、これが行われていたそうで。帰路についてる車が沢山通り、すれ違う度に蹴り上げられた小石がフロントガラスに当たり、飛び石による連続技できあいのタスキを貫通しながら車は数ヵ所の小さなひび割れというダメージを負っていくのである。

 

フトアゴヒゲトカゲ。我々が来る前に車に当たったか。

道中の開けた荒野で数匹のフトアゴヒゲトカゲが道の脇でバスキングをしている姿を発見。今でこそ爬虫類飼育の入門種みたいな扱いの本種も野生で会おうとなると案外ガッツリと内陸を攻めないと会えない存在である。写真の個体は口から少量の血が出ていたので多分増えた交通量で路肩に出る車が多くなった結果、車に当たったと思われる。

 

Bouliaの中心街。一つ酒場があればそれはもう町なのだ。

アリススプリングスまであと800km」なる中々に感慨深い道路標識を通過しつつ、Bouliaの町に到達。道中の閑散具合を加味すると大きく栄えた町である。折角なので町の端から端までを歩いてみることにしたが、200mも歩かないうちに踏破できてしまったのでなんとも達成感が無い。

 

パブ(酒場)に入ってみる。QLD色が強い。

パブに入ってビールとコーラを頂くことに。日曜なので昼間から飲んでるローカル連中も散見されるが、よく考えるとそれは平日にも普通に見られる光景ではないだろうか。Bouliaの町はラクダ推しなのでここのパブにはラクダ肉を使用したキャメルバーガーなる幻のメニューがあると友人氏は語るが、いつ来ても品切れだと言われるらしい。

「今日はキャメルバーガー無いの?」

「ごめんなさいキャメルバーガーは売り切れよ」

「やはりか」

「ちょっと裏に何かあるか聞いて来るわね」

「おっ」

 

キャメルミートパイ。旗が可愛い。

「キャメルミートパイならあるわよ!」

「おぉ、冷凍されてたか」

「食ってみよう食ってみよう」

「じゃあそれ2つください」

 

ラクダ肉は美味しいが脂が重い。

ラクダ肉を使ったミートパイを食す。田舎のローカルパブでミートパイを食うというこの状況は客観的には中々絵になるものなのだが、いかんせん我々の興味は俄然目下のラクダ肉にあり、赤身の肉に若干の独特な酸味に似た味わいを感じさせるその肉はおよそ美味と分類されるのであるが、食べ進めるうちに気づかされるのはこいつの脂が非常に重く腹にのしかかってくるということであり、ミートパイ1つを食べ終わるころには「もうしばらく食事は良いかな」と思えるようなそんな不思議な肉であると共に、これもまた確実に言えてしまうことなのだが、じゃあ高額を出してラクダ肉を食うか通常値段で牛肉を食うかという選択肢を出された場合、少なくとも今後10ヶ月くらいは「じゃあ牛肉で」と答えるであろうそんな肉である。

 

ここを本日のキャンプ地とする。

キャラバンパークにて設営。相変わらずテント立ててるのは我々しかいないが気にしない。キャメルレース後も滞在している組が多く結構混雑していた。15:00には時間の余裕もできてしまったので、とりあえず散策に出ることに。

 

こんなところにオカメやセキセイは住んでいる。

しかしここは凄いところである。車を転がせばすぐにセキセイインコの群れに当たる。その隣を見上げればオカメインコたちがたむろしている。やれ右にセキセイだ、やれ左にオカメだと至る所で発見できてしまうが故に、車は一向に前に進まないのである。

 

セキセイインコの成る木。後ろも鈴生り状態。

セキセイのペア。足元のユーカリの洞に入ってた。

オカメインコの成る木。

オカメとセキセイの夢のコラボ。もうちょい寄ってくれ。

地面に下りて採食中のオカメ達。

日が傾き始めるまでたっぷりとインコ達を堪能した我々は、翌日水場に集まってくるであろう彼らを待ち受けるべく水場の偵察を行った後、日の出の前には現場に入ることを決意してテントへと戻って行った。

 

遠方にいたヒトコブラクダ。野生化した個体だと思う。

帰路の途中、遠くのほうにヒトコブラクダを確認。さっき食ったのはこいつらなのかと考えつつも、多分この個体は野生化してしまったラクダなのだろうなと思うともやもやするのである。本来オーストラリアにはラクダは棲息しておらず、移民が砂漠の移動手段として持ち込んだものの一部が逃げ出し野生化・定着してしまったものが多く存在し、特に換気に植物への食害が生態系へ大きく影響を与えてしまう侵略的外来種。そして皮肉なことに、本来の生息域であった西アジア北アフリカにおける野生のヒトコブラクダは乱獲と家畜化によって姿を消しているため、昨今で「野生のヒトコブラクダ」を見ることができるのは外来種扱いのここオーストラリアにおけるヒトコブラクダしかいない。

 

キャンプ地の横の川に溜まっていたトビ達

小魚キャッチ。3割くらいはこのあと落とす。

陽が落ちるまではテント横の川岸にたくさん留まっていたトビ達を観察するなど。夕まずめ時で水面に上がってきている小魚を盛んに襲って食べていたが、自分としてはトビ=ロードキルの死肉を食ってるイメージが強く、自力で狩りをしている姿は意外と新鮮である。

 

シーフードヌードル。美味い。

昼間に食べたキャメルミートパイが予想以上に重かったので夕飯はカップ麺だけで済まし、水辺が近いせいか日が暮れ始めるにつれて蚊が出始めたので19:10にはテントに撤退。やはり焚火が無いと夜が短いのだ。

 

インコ達が元気にお喋りしてる中で、内陸の冷える夜が来る。

明日は06:00から観察に出発して、1500kmの帰路に着くことになる。目標地点はWinton周辺…つまりはあの悪夢の土地Corfield周辺泊になるかもしれない。

 

ここまでの道のり。出発地点から約1500km。

 

 

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