とある獣医の豪州生活Ⅱ

豪州に暮らす獣医師のちょっと非日常を超不定期に綴るブログ

とある獣医の豪州生活Ⅱ

毛刈り

おいっすおいっす、AKIですよ。

 

皆さん毛刈りしたことあります?

ヒツジとかアルパカとか、その辺のモフモフしてる奴らの毛を頂戴するあれです。

バリカンでガーッ!とやるんですが、見た目以上に難しいんですよね。体力使いますし全身毛まみれになって気狂いそうだし、デッカイ刃物を扱う仕事なんでちょっと気を抜くとヒトも動物も大怪我しかけない大変な作業なのです。

 

で、今や懐かし大学時代を思い出すような毛刈りに久々に遭遇しました。

 

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野良犬の「毛刈り」。もはやグルーミングとは言わないレベル。

まぁ相手はイヌなんですけどね。

詳しい事情は不明ですが、飼主に見放されて放置状態にあった半野良犬が保護されてうちに担ぎ込まれてきたのですよ。ボランティアの方が保護してきました。

オーストラリアには原則「野良犬」はいません。野良犬判定されて捕まったらすぐに市役所管轄のシェルターに連れていかれ、1週間飼主が現れなかった場合は去勢避妊手術後にマイクロチップを埋めて里親探しになります。ちなみに飼い主が現れた場合は罰金取られます。

なのでアジアでは馴染みがあり過ぎる「その辺をイヌがうろついている」はありません。いやまぁケアンズは田舎だからうろついてるんだけどな、本来はほとんど無いのよ…。

一匹でうろついてるイヌがいればすぐに通報され、捕獲、保護されます。罰金払いたくなければマイクロチップを入れて放し飼いにするな、という方針ですな。公共衛生面や獣害対策として非常に有効です。

 

なので、上記のようなイヌがその辺の道端を歩いていたら基本的にはそこまで時間かからずに保護されるモンなんですが、きっと家に繋がれつつも放置されていたんでしょう。

 

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ウールだもの。毛玉が何重にもなってる感じ。

保護したT氏(いつも迷えるイヌネコを自費で保護してはうちの病院に連れてきてくれる現世のマリア様)曰く、保健所に連れていく前にクリッピングとシャンプーをしてほしいとのこと。少しでも里親が見つかりやすそうなワンコにするためです。

しかして毛玉を刈っても刈っても隣接する毛玉に絡んでいて取れません。マジでウールの如き密度で絡み合ってます。

 

そして地肌に見える点々とした血痕ですが、

 

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Bush tick。毒はないけど吸血性で病気も媒介します。

原因はこいつら。

毛を纏っていたときは気付かなかったけど、毛を刈ってみると出るわ出るわ、何十何百というおびただしい数のダニです。

こいつらはBush tick。名前の通りブッシュの中に棲息しており、通りかかった動物に着いて吸血する奴ら。豪州にはイヌネコを殺しかねない麻痺毒を注入してくるParalysis tickもいますが、Bush tickは毒は持ってない。

 

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床にポロポロと落ちてくるダニを溺死させ処理

毒は無くても、こんな小型犬に500匹近くが喰いついているとなるとこれはもう下手すりゃちょっとした貧血起こしても驚かないレベルです。一匹がデカイからなBush tick...

 

あまりの量なんで思わず監督ですよ。

 

AKI 「看護士諸君、手袋をしっかり着用の事。人獣共通感染症に気をつけよ」

看護士「隣りでチョコレート食べるの止めましょうね」

AKI 「あ、サーセン

 

監督不行届き(自分)。

 

 

 

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シャンプーもしてサッパリ!

丸刈りにしてシャンプーしたら見違えった。誰だこのイヌ。

病院から去る頃には新しい里親を見つけたT氏。マジでぐうの音も出ない聖母。